著者ローレンスは、米軍がバグダットを陥落させ、あのサダム・フセインの大きな銅像が引き倒されて時を置かずにクウェートからバグダッドに入った。
必要最小限の物資を持って、バグダット動物園の動物の様子を調査に行ったのだ。
苦労を重ねて辿り着いた動物園・・・惨憺たる状態だった。。。
ほとんどの動物は略奪者によって連れ去られてブラックマーケットで売り飛ばされるか食べられるかしたようだ。
生きている動物も痩せ衰え、怯え、汚れ、かろうじて生きている状態だった・・・。
ローレンスは、この生きている動物を一頭ずつ射殺してやることが、動物のためではないかとさえ思ったほど惨憺たる様子だった。
そのローレンスの前に一人のイラク人男性が現れた。
そこからだ。
たった二人で悲惨な状態に陥ったバグダット動物園の再開への厳しい歩みが始まった。
まずは二人だけで、動物達に飲ませるためにバケツに水を汲んで運ぶことから・・・。
ローレンスは南アフリカで生まれ、象を主体とした野生動物保護区を主催する活動家。
かつて、アフガニスタンが戦火にさらされ、タリバンから開放された時・・・カブール動物園で一頭の生き残った雄ライオン、マルジャンが発見された様子・・・渇ききった姿、首や顎に銃弾の破片が食い込み、片目は潰れ、毛は抜け落ちまだらに・・・その姿に衝撃を憶えた彼は、同じことがバグダット動物園で起きている、なんとかしなけれなならない、と行動を開始した。
彼の基本的考え方が本書の中の彼の言葉によく表れている。
「怒りがこみあげてきた。これは宇宙の調和を乱す罪だ。同じ星に生きる仲間に、これほどひどい虐待を行えるとは、とうてい信じられない。自分の属する人類という種に対する認識を改めずにはいられなかった」
「人間の愚かさの代償を命で支払うのは、いつもほかの生き物なのか?」
などなど。。。
だが・・・かれは悲観主義はとらない。あくまで楽観主義的に考える。
そして、決して人嫌いではない。
アメリカ兵でもイラク人でも、心ある人の行動を語る口調はあくまでも優しい。
ただ、サダム・フセインと、実は、サダムよりもっと残虐非道ぶりな行為の限りを尽くしたサダムの息子、ウダイに対しての口調は厳しい。唾棄せんがばかり。
陥落とは名ばかり、一部占領というのが妥当な当時のバグダットで、動物の命を救い、動物園を再生させるために立ち上がった人々のこの物語。。。
感動的に描こうと思えば出来たであろうと思うが・・・ローレンスはあくまで淡々と語る。
彼が持っているであろうと容易に想像できるユーモアのセンスもちりばめながら・・・。
淡々と語られるだけに・・・静かに、静かに・・・心の内に感動が広がっていくような思いで読了。

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