2007年、ドイツで大ベストセラーを記録したミステリー。
著者はそれまで普通の専業主婦だったのだが、本作で一躍ドイツミステリー界に彗星のように躍り出た。
1922年に、ドイツの農村で一晩のうちに一家6人(幼い子供二人、女性の使用人含む)が惨殺され、犯人が捕まっていない実際に起こった事件を題材に書かれた物語。
何が斬新か?
ほとんどが村人や関係者の証言で進んでいく。
まるで読む者が捜査する刑事になって事件の糸口を掴むべく、メモする手帳片手に人々の家の戸口で、あるいは居間で話しを聞いていくようなスタイルで進行する。
刑事(デカ)Haru.Seion気分で読み進んだ。
一件、単調に真相に迫っていくかのようにも感じるが・・・
なにげに怖いのは、人々の語ることの微妙なズレ、ニュアンスの違い。
惨殺された一家に対する感情によって、同じことでも見方が違うし、ほとんど噂話に乗じたような話しもある。
これは実際の世間の“口”の怖さだと思う。
きっと著者は、実生活で世間や隣近所の言葉による暴力というか攻撃みたいなことに晒されて悩んだことがあるのではないか・・・と推察した。
それが、今までにない斬新なスタイルを生むことになったのかもしれない。
そうした、虚虚実実、好悪の感情の元に語られる人々の話しの中に注意深く事件の核心に迫る断片が埋め込まれている。
その作業の繊細さは、1度読んでから、ざっとおさらいで読むとよくわかる。
舞台は、いわゆる田舎の閉鎖的な社会、その閉鎖的な人間関係の中で起こった惨劇・・・。
ひょっとしてドイツの読者にはその状況設定、雰囲気のおどろおどろしいものとして受けたのかもしれないが・・・その筋では日本には大家、横溝正史有り。
だから、そういう怖さが味わいたいなら・・・ドイツの人にも横溝作品をお奨めしたい。(笑)
ストーリー展開には関係ないから語っても良いだろうが・・・
訳者の前書きにあった実際の事件のあらましはマジ怖かった。
当時のミュンヘン警察は、6人の遺体を埋葬するにあたって、6人の頭部を切り落とし、その首をニュルンベルグに送って二人の霊媒師に対面させ、霊感によって犯人を探させようとしたらしい。
たしかに現代ではなく・・・時は1922年・・・ではある。
だが、中世ではあるまいし、警察がそんなことを・・・と、情況的に怖かった。
ある意味、導入部としては最高の【はじめに】かもしれない。
この物語を読んでいる間・・・起こった時も場所も違うが・・・未だに犯人の逮捕に至っていない世田谷の一家の身に起こった事件のことが脳裏に浮かんでいた。**この記事に何か感じるところがございましたらクリックいただければ幸いです**